2chへの書き込みで誹謗中傷被害を受けた場合、削除依頼のハードルはかなり高いです。
なぜなら2chは成り立ちが複雑で、現在は2つのサイト＋無数のコピーサイトがあり、それぞれ削除依頼の方法や削除ガイドラインが違うため。
2ch・5chの運営元が海外法人であることも、2chへの削除依頼が難しい理由の一つです。
今回は、2chに削除依頼をしたい場合、どんな方法があるのかを知っていきましょう。
3つの「2ch（2ちゃんねる）」とは
そもそも、「2ch（2ちゃんねる）」は1999年に西村博之氏が立ち上げた匿名掲示板です。
長らく「2ch.net」のドメインで「2ちゃんねる」として運営してきましたが、2014年にジム・ワトキンス氏がサーバー料金の未払いを理由に西村氏を運営から解任。
西村氏はこれを「違法な乗っ取り行為である」として、「2ch.sc」のドメインで新たに「2ちゃんねる」を開設しました。
同時期に、西村氏が「2ch」「2ちゃんねる」の商標権を登録したため、「2ch.net」は「5ちゃんねる」に改称、ドメインも「5ch.net」に変更しています。
現在一般に「2ちゃんねる」と呼ばれるサイトは「5ch.net」と「2ch.sc」の2種類があるのです。
さらに、2ちゃんねるの書き込みをコピーして掲載するアフィリエイトサイト等も登場しています。
2chに書き込まれた内容を完全に削除するためには、「5ch.net」「2ch.sc」「まとめサイト・コピーサイト」の3ヶ所に削除依頼をする必要があるのです。
①2ch.net（現5ch）
先にも触れたように、「2ch.net」は2ちゃんねるが長らく使っていたドメインです。
現在は、「5ch.net」「5ちゃんねる」として運営されています。
一連の「2ちゃんねる」関連掲示板・サイトの大元とも言えるサイトですが、「2ch.sc」やまとめサイトへの情報のコピーは禁止しています。
②2ch.sc
「2ch.sc」は、2ちゃんねるの開設者である西村博之氏が2014年に立ち上げた掲示板です。
「2ch.net」を定期的にクロール（ロボットによる巡回）し、書き込みなどコピーしているため、一見した内容は「2ch.net」と同じに見えます。
しかし、「2ch.net」は「2ch.sc」の情報をコピーしていないため、「2ch.sc」への書き込みが「2ch.net」に反映されることはありません。
また、「2ch.net」とは逆に、まとめサイトへの転載を開設時から全面的に許可しています。
③まとめサイト・コピーサイト
まとめサイトとは、2chに書き込まれた内容をピックアップしたり、レスの順番を変えたりして転載しているサイトのことです。
主にアフィリエイト収入を目的としていて、自動でクロールしてコピーしているわけではなく、サイト管理者が手動で投稿を行なっています。
コピーサイトとは、自動で「2ch.net」や「2ch.sc」をクロール・コピーする掲示板形式のサイトです。
「2ch.sc」も「2ch.net」のコピーサイトの一種と言えます。
削除依頼方法はそれぞれ異なる
これらの「2chたち」に対して、削除依頼をする方法はそれぞれ異なります。
大元の書き込みを削除すれば、全ての書き込みが消えるというわけではないので、2chの削除依頼には大変な手間がかかるのです。
次の項目から、それぞれのサイトへの削除依頼方法を解説していきます。
2ch.net（現5ch）の削除依頼方法
5ch.netへの削除依頼は、メールまたは削除依頼フォームから行います。
メールで削除依頼する
まず、メールで削除依頼をする方法を解説します。
削除依頼メールの宛先は「meiyokison@5ch.net」。
内容には、削除対象URLと、法的な削除理由を明確に記載します。
5ch.netでは「同定可能性（中傷されているのがその人だと特定できること）」が重視されるため、削除依頼をする法的根拠がしっかりしていることが重要です。
最後に、自分の身分証をスキャンしたものを添付して送信しましょう。
身分証は、氏名・住所・顔写真が入っているものが望ましいです。
削除依頼フォームで依頼する
5ch.netでは、運営に直接メールする以外に、削除依頼フォームを利用することもできます。
削除依頼フォームに送信した内容は、2ch（5ch）全体に公開されます。
削除を行うのは運営ではなく、「削除人」と呼ばれるボランティアです。
そのため、削除を行う基準がまちまちで、特に法人の場合は削除対象となる可能性が低いため、あまりおすすめできる削除依頼方法ではありません。
裁判所による仮処分
「5ch.net」のガイドラインでは、「犯罪に関する情報及び法人に関する情報の場合は、原則として裁判手続きによって仮処分を取得して、司法判断を待つことにする」としています。
犯罪に関する書き込みに関しては、削除依頼メールを送っても削除されない可能性があります。
その場合、裁判所を通じて「仮処分命令」で削除依頼をすることになります。
仮処分命令の対象となるのは、5ch.netの運営元であるフィリピン法人「RaceQeen,inc」です。
仮処分の申し立てを行うと、2週間程度で判決が出て、主張が認められた場合には2chから書き込みが削除されます。
5chが認めた弁護士による削除依頼
5ch.netのガイドラインでは、「5ちゃんねるが認めた弁護士からの請求」によっても削除依頼が可能とされています。
ただし、「5ちゃんねるが認めた弁護士」が誰であるか、認定される基準などについては、明らかにされていません。
過去に受けた請求から、表現の自由との均衡が取れているかどうか、リーガルマインドがあるかどうかという点が、判断基準となっているようです。
削除依頼メールが反映されなかったり、裁判所の仮処分を待っている時間がなかったりという場合は、この条件を満たしそうな弁護士に依頼するのが近道と言えます。
2ch.scの削除依頼方法
次に、2ch.scへの削除依頼方法を解説していきます。
削除依頼フォームで要請する
2ch.scはメールでの削除依頼は受け付けておらず、削除依頼フォームで要請することになっています。
フォームの形式は5ch.netと全く同じで、削除依頼フォームに送信した内容は全て公開されます。
削除依頼板へ報告
2ch.scには、削除依頼フォームとは別に削除依頼をするための掲示板があります。
「削除要請板」と「削除整理板」の2つがあり、削除要請板は重要削除対象専用、削除整理板はその他の削除依頼用となっています。
「重要削除対象」に含まれるのは、以下のような内容です。
・個人名・住所・所属
・電話番号
・メールアドレス
・情報価値が無く私事のみの情報
・第三者の確認できないプライベート情報
・差別・蔑視発言
・荒らし依頼
・裁判所から判決や仮処分の決定が出ている場合
削除対象となる書き込みであっても、依頼する板が違うと対応されない場合もあるので、内容によって使い分けましょう。
これらの削除依頼板に依頼した内容も、全て2ch全体に公開されます。
裁判所における仮処分
削除依頼フォーム・削除依頼板に書き込んでも削除されない場合や、全体に公開される形で削除依頼をしたくない場合は、裁判所に仮処分の申し立てを行うことになります。
注意点は、2ch.scはシンガポールの法人である「PACKET MONSTER INC,PTE.LTD」が運営元なので、日本国内ではなくシンガポールの登記取得が必要なこと。
海外法人であるにも関わらず、日本の裁判所が仮処分を担当するべき理由などについても証明が必要で、日本の会社に仮処分の申し立てをするより手続きがかなり複雑です。
③2ちゃんねるまとめサイトの削除依頼方法
2ちゃんねるのまとめサイトに削除依頼を行う方法は、サイトごとに異なります。
しかし、基本的には管理人に直接コンタクトを取り、応じられなければ他の場合と同様に裁判所による仮処分を申し立てることになります。
管理人に連絡して削除依頼
個人で運営しているまとめサイトは、2ch.netや2ch.scとは違って明確な削除基準を定めていないことが多いです。
そのため、まとめサイトの記事を削除するには、記事が法的にどのような問題があるのかを指摘し、削除の必要性を認めさせなければいけません。
記事を実際に削除するかどうかは、基本的に管理人の一存となります。
投稿者の開示請求はできない
まとめサイトの管理人は、あくまで2chの書き込みをコピーしてまとめただけであり、問題の書き込みをした本人ではありません。
投稿者のプロバイダ情報等を把握しているわけでもないので、まとめサイトを相手取っても投稿者の情報開示を求めることはできません。
ただし、管理者自身のコメントに違法性がある、違法性のあるまとめの削除要請に応じない場合などは、管理者自身の情報開示請求を行って損害賠償請求を行うことは可能です。
まとめ
2chにはおおまかに3種類のサイトがあり、コピーされ拡散されてしまった書き込みを全て削除するのは困難です。
削除依頼フォームへの書き込み内容が公開されるなどのデメリットもあり、削除依頼のハードルはかなり高いと言えるでしょう。
2ch.net、2ch.scは運営会社が海外にあることもあり、手続きが複雑なので、2chの削除依頼をしたい方はまず弁護士に相談するのがおすすめです。
