ネットでの誹謗中傷事例まとめ~
どんな罪に該当する?
1. 増加するネットでの誹謗中傷事件
2.ネットで誹謗中傷被害を受けた有名人・芸能人の事例
3.ネットで誹謗中傷被害を受けた一般人・企業の事例
4.ネットでの誹謗中傷は罪になる?
5.ネットで誹謗中傷された時にできること
6. まとめ
SNSでの炎上騒動や、掲示板での悪質な書き込みが非常に増えています。
しかし近年、情報開示請求を行って訴訟を起こし、犯人逮捕や慰謝料を請求できたという事例も多数。
ネット上の誹謗中傷は犯罪であり、一人で悩まず警察や弁護士に相談するのがおすすめです。
今回は、ネット上で誹謗中傷を受けた有名人・一般人の代表的な事例を見ていきましょう。
増加するネットでの誹謗中傷事件
SNSや掲示板を舞台とした、ネットでの誹謗中傷事件が増加しています。
2020年4月のネット炎上件数は、前年比で3.4倍も増加したという調査結果もあります。
これは、新型コロナウイルスの影響により、自宅でネットを使う時間が増えたことや、自粛ムードの中でストレスを溜める人が増えたことが原因と言われています。
また、影響力のある人が誹謗中傷被害への対応についてSNS等で公表したり、逆に誹謗中傷を苦にして命を絶ってしまった事件があったことで、誹謗中傷が表面化しやすくなっています。
参照:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG292820Z21C20A2000000/
ネットで誹謗中傷被害を受けた有名人・芸能人の事例
多くの人に顔や名前を知られている有名人や芸能人は、一般の人よりも誹謗中傷の被害者になりやすいです。
まずは、特に大きな話題となった、4つの事例について見ていきましょう。
女子プロレスラー・木村花さん
人気番組「テラスハウス」に入居者として出演していたプロレスラーの木村花さんは、2020年5月28日に自ら命を絶ってしまいました。
その直前に、自分に寄せられた誹謗中傷の書き込みに「いいね」をしていたことから、原因はSNSでの誹謗中傷だと言われています。
木村花さんのSNSには「おまえがいなくなればみんな幸せ」「早く消えてくれ」といった悪質なコメントが、1日数百件以上も寄せられていました。
木村花さんの遺族は、悪質な書き込みに対して情報開示請求を行い、誹謗中傷を行った男性に対して、129万円の支払いを認める判決を勝ち取りました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE18AL50Y1A510C2000000/
元AKB48・川崎希さん
元AKB48の川崎希さんは、2019年10月に自身のブログで、ネット上で誹謗中傷や悪質な嫌がらせを受けていたことを告白。
訪れた飲食店に、やってもいない無銭飲食や窃盗のクレームを入れられたり、妊娠発表後に「嘘つくな」「流産しろ」といったメッセージが毎日届いていたりしたそうです。
川崎希さんは発信者情報開示請求を行い、悪質な書き込みをした人の個人情報を特定して刑事告訴。女性2人が、侮辱罪で書類送検されました。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202003200000222.html
女優・春名風花さん
2011年に、Twitterでの発言が注目されたことで、フォロワー数が急増。
同時に悪質なコメントも増え、具体的な殺害方法なども示した殺害予告も書き込まれたことから、警察が捜査をする事態に。
しかし、この時は犯人の特定や逮捕には至りませんでした。
その後も、春名風花さんは誹謗中傷被害への法的対応を進め、2018年に書き込みをした人物を相手取って慰謝料など約265万円を求めて訴訟。
2020年7月16日、自身のYoutubeチャンネルで示談が成立したことを報告しています。示談金は315万4000円だったそうです。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2007/20/news126.html
お笑い芸人・スマイリーキクチさん
お笑い芸人のスマイリーキクチさんは、「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人であるという誹謗中傷を、長期にわたって受けていました。
当初、スマイリーキクチさんは自分で疑いを晴らすため、説明用のブログを開設しましたが、そこにも誹謗中傷の書き込みが殺到。
自分の周囲の人や事務所にまで被害が広まり、身の危険を感じたスマイリーキクチさんは警察に相談し、捜査が始まります。
その結果、誹謗中傷の書き込みをした1,000人以上もの犯人の身元を特定し、そのうち特に悪質な19人が検挙されました。
最終的には不起訴処分となりましたが、日本で初めて、誹謗中傷を行った加害者が一斉摘発された事件となりました。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20090206-457776.html
ネットで誹謗中傷被害を受けた一般人・企業の事例
一般人や企業であっても、些細なきっかけから誹謗中傷のターゲットになってしまうこともあります。
その4つの事例について、見ていきましょう。
大阪市の高校の体罰問題関連
2013年、大阪市の高校の部活で日常的に体罰が行われ、それを苦にした生徒が自殺するという事件が発生しました。
事件自体は事実ですが、学校側が「見過ごした在校生たちにも責任がある」と取られるような対応を行ったことから、無関係の生徒にまで批判の目が向けられました。
同校の生徒は、ネットの掲示板に個人情報や謂れない誹謗中傷が書き込まれる、実生活で罵声を浴びせられる、持ち物が壊されるといった嫌がらせを受けたということです。
東名あおり運転事故デマ書き込み
2016年6月、東名高速であおり運転を原因とする事故が起こり、車に乗っていた夫婦2人が死亡した事件。
犯人はすでに逮捕されていますが、犯人の苗字と同じ名前の建設会社(実際は無関係)を「社長が容疑者の父」「容疑者の勤務先」とする誤った情報がネット上で拡散されました。
嫌がらせを含む会社への電話は1日100件以上にも上り、業務に支障をきたした会社は被害届を提出。デマ情報を書き込んだ11人の家宅捜索が行われ、名誉毀損容疑で書類送検されました。
茨城県「学校裏サイト」でのいじめ
2005年、茨城県の高校で「学校裏サイト」を利用したいじめが発生しました。
「消えろよ」「やめるの楽しみにしているよ」などの書き込みと、実生活でも無視されたことを苦にして、いじめられた生徒は同年6月に学校を退学。
2008年、元生徒は書き込んだ元同級生とその両親を相手取り、慰謝料200万円の民事訴訟を起こしました。
日本生命への誹謗中傷
2001年ごろ、ネット掲示板の「2ちゃんねる」に、日本生命の会社自体や、社員個人を誹謗中傷する書き込みが繰り返されました。
日本生命側が削除依頼を行い、2ちゃんねる側は社員個人への中傷には自主的に削除を申し出たものの、会社についての書き込みについては放置。
最終的に、犯人は特定できませんでしたが、日本生命は裁判所を通じて仮処分申請を行い、東京地裁官は管理者に対して削除を命じる決定を下しました。
ネットでの誹謗中傷は罪になる?
ネットでの誹謗中傷は、ここまでの事例でもわかる通り罪になり、実際に逮捕者も出ています。
具体的に、どんな内容が罪になるのか、またどんな罪に問われるのかを知っていきましょう。
名誉毀損罪や侮辱罪
ネットを通じて、公然と行った誹謗中傷は、名誉毀損罪や侮辱罪に問われます。
それぞれの罰則は、以下の通りです。
・名誉毀損罪:3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金
・侮辱罪:拘留または科料
上記は刑事訴訟の罰則であり、民事訴訟であれば被害の大きさに合わせて慰謝料などを請求することも可能です。
名誉毀損罪と侮辱罪の線引きは、「具体的な事実を摘示」しているかどうかです。
例えば、「Aさんは不倫をしている」「Aさんは横領をしている」といった、証拠を示せば事実がわかる内容は、本当かどうかに関わらず名誉毀損罪。
具体的でなく、証拠や根拠も示しようがない「Aさんは馬鹿」「Aさんがいなくなればいいのに」といった書き込みは侮辱罪になります。
特定の人しか分からない書き込みでもNG
名誉毀損罪と侮辱罪の要件には、どちらも「公然と」というワードが含まれています。
身内にしかわからないあだ名や隠語を使った、特定の人にしかわからない誹謗中傷は「公然と」とは言えないと考える人も多いです。
しかし、ネットに書き込んだ誹謗中傷は、人から人へと広がっていく可能性があります。
書き込みを見た人が、一人でも「これは○○さんのことだ」とわかれば、次は実名で誹謗中傷が広まることもありえるのです。
特定の人にしかわからないように書き込んだ誹謗中傷も、名誉毀損罪・侮辱罪に問われることがあります。
匿名でも投稿者の特定は可能
SNSでハンドルネームを使ったり、匿名掲示板で書き込んだりすれば個人情報はわからないと思う人もいるかもしれません。
しかし、裁判所を通じて「発信者情報開示請求」を行えば、プロバイダ情報から個人を特定することは可能です。
実際に、情報開示請求で得た情報を元に訴訟を起こしたケースは多数ありますし、逮捕者も出ています。
ネットで誹謗中傷された時にできること
ネットで誹謗中傷されたときには、自分だけで全て解決するのは難しいです。
先の事例でも、自分で説明をしようと開設したブログに、さらに誹謗中傷が集まってしまったというケースもありました。
すべて自分で対応しようとすると、さらに嫌がらせがエスカレートしたり、訴訟に必要な情報を逃してしまったりすることがあります。
ネットで誹謗中傷を受けたら、実生活に被害が及びそうな場合は警察に、慰謝料などの損害賠償請求を行いたい場合は弁護士に相談しましょう。
まとめ
ネットでの誹謗中傷が問題となった事例は、有名人・一般人を問わず多数。
犯人が逮捕されたり、慰謝料を請求できたりしたケースもたくさんあります。
ネットでの誹謗中傷に悩んでいる方は、自分で解決しようとせず、警察・弁護士といった専門家にまず相談しましょう。