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「信用毀損罪」とは?
罪に問いたい・問われた場合の対処法

「信用毀損罪」という言葉を聞いたことがありますか?
「名誉毀損罪」は有名ですが、信用毀損罪といってもどんな犯罪を指すのかピンと来ない方も多いでしょう。

今回は、信用毀損罪の要件や具体例、実際の判例を紹介いたします。
自分が信用毀損罪の被害者・加害者になった場合の対応方法についても解説していきます。

信用毀損罪とは

信用毀損罪とは、「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損する罪」です。
簡単に言うと、嘘の情報で他人(個人と法人のいずれも含みます)の信用を傷つけることです。

ここでいう「信用」とは、支払能力や経済力など、主に「経済的な信用」のことです。
相手が商売を行なっている場合、その商品の品質に対する信頼を貶めるような嘘をつくことも、信用に傷をつけることです。
例えば、「あの会社は倒産寸前だ」「あの商品には違法な添加物を使っている」などの嘘を広めることが、信用毀損罪に該当します。

信用毀損罪の刑罰

信用毀損罪の刑罰は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
信用毀損罪は名誉毀損罪等と違って親告罪ではないので、被害者が訴えを起こさなくても刑事事件として立件される可能性があります。

また、被害者は、民事訴訟によって、別途慰謝料や損害賠償を請求することも可能です。

信用毀損罪と他の罪との違い

信用毀損罪と、混同されやすい他の罪との違いについて見ていきましょう。

業務妨害罪

業務妨害罪と信用毀損罪の違いは、会社や商品の「信用」が失われたか、妨害によって「業務」の遂行が困難になったかということです。

業務妨害罪とは、恐喝・暴力・嘘の情報などで被害者の業務を邪魔すること。
業務妨害罪と信用毀損罪は、結果的に被害者が売上の減少など金銭的な損害を受けるというところが似ています。

偽計業務妨害罪

先に解説した業務妨害罪には、恐喝や暴力などによって業務を妨害する「威力業務妨害」と、嘘の情報を流して業務を妨害する「偽計業務妨害」があります。

信用毀損罪と、とても似ているのが、偽計業務妨害罪です。
偽計業務妨害の定義は、「虚偽の風説を流布し,または偽計を用いて人の業務を妨害する行為」と、前半部分は信用毀損と同じです。

二つの違いは被害内容で、「信用を失わせたか」「業務を邪魔したか」ということです。
例を挙げると、ネットに嘘の悪評を書き込んだ場合、書き込んだ時点では信用毀損罪が成立します。
書き込みのせいでクレームの電話が殺到するなど、業務に支障を来たす程度に至った場合には偽計業務妨害が成立します。

名誉毀損罪

名誉毀損罪は、「公然と、事実を摘示して人の名誉を毀損すること」。
分かりやすく言うと、不特定多数の人に、その人の名誉を貶めるようなことを言いふらすことです。
信用毀損罪とイメージが似ていますし、重複する部分もありますが、名誉毀損罪は信用毀損罪よりも該当する幅が広いです。

信用毀損罪は広められた内容が「嘘であること」が要件ですが、名誉毀損罪の場合は本当のことであっても罪に問うことができます。
また、「信用」は経済的な信用が中心ですが「名誉」は多岐にわたり、容姿・性格・所属・言動などおよそ人に対する社会の評価を貶め得ることであれば、様々なことへの中傷が該当します。

信用毀損罪が成立するケース

それでは、信用毀損罪が成立する、具体的なケースについて見ていきましょう。

信用毀損罪の典型的な例

信用毀損罪とは、ここまでも解説してきたように、会社・商品・個人などについて、主に経済的な信用を傷つける嘘を流布することです。
典型的な例としては、以下のようなことをネットに書き込んだり、不特定多数の人に噂を流したりすることを言います。

・「あの会社は経営が傾いていて倒産目前」
・「あの会社に不当な値下げ要求や支払い拒否をされた」
・「〇〇(商品名)に異物が混入していた」
・「あの人は自己破産したことがあるから融資はやめたほうがいい」

信用毀損罪の判例

信用毀損罪の実際の判例として、平成15年の最高裁のものをご紹介いたします。

被告は、コンビニでオレンジジュースを購入し、その後故意にその中に洗剤を投入。
警察に、「ジュースに洗剤が入っていた」と虚偽の申告を行い、その旨は全国ニュースで報道された。
その後の捜査で、異物混入は被告の自作自演だったことが判明し、最高裁は信用毀損罪の成立を認めた。

参照:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/043/050043_hanrei.pdf

この判例では、「信用」に、経済的信用だけでなく、商品やサービスの品質の信用をも含まれると判断されています。

ネットへの匿名投稿でも成立する?

信用毀損は、ネットへの匿名投稿でも成立します。
ただし、訴えを起こすには「発信者情報開示」によって発信者を特定する必要があります。

発信者情報が保存されるのは、発信日から3ヶ月~半年程度のため、ネットでの信用毀損を立件したい場合にはスピーディーな対応が必要です。

信用毀損罪違反に問われたら

最後に、自分が信用毀損罪違反に問われた場合、どんな対応が必要になるのかを解説します。

問題になった場合の流れ

信用毀損罪は親告罪ではないので、被害者が告訴しなくても立件されます。
いきなり逮捕状が発行されて逮捕されるという可能性もゼロではありません。

しかし、被害者から一切被害申告がない状態で、警察が信用毀損罪を事件化することは少ないです。
信用毀損罪に問われる場合、被害者が弁護士等を通じて民事的に身元特定を行い、示談や民事訴訟の手続きを進めていく可能性が高いでしょう。
加害者側には、被害者の弁護士から示談の申し入れが届くか、裁判所から訴状が郵送されます。

刑事事件になった場合の対処法

もし、被害者が刑事告訴をして、自分が刑事罰に問われることになったら、どのように対処すれば良いのかを解説していきます。

できれば示談をすすめる

刑事事件になった場合、裁判にせず、示談でおさめるが理想的です。

刑事告訴されて有罪になると、刑務所への収監や罰金刑になります。仮に執行猶予がついても前科がつくことは免れられず、今後の社会生活で不利益を被ることは避けられません。
また、「訴訟記録」が残され、自分の個人情報や、有罪判決が出たことを誰でも閲覧できるようになってしまいます。

示談には、被害者と加害者双方の同意が必要なため、拒否される可能性もありますが、なるべく早く弁護士に相談し、示談交渉をした方が良いでしょう。

謝罪広告を求められることがある

信用毀損罪に該当する行為をした場合、不特定多数に風説を流布したことで、相手の信用を貶めている状態です。
刑事罰や賠償金の他に、相手の信用を回復させるための訂正記事の掲載や、謝罪広告の掲示を求められることがあります。

示談交渉・裁判は弁護士に依頼する

示談交渉や裁判は、弁護士に依頼せず自分で対応することもできます。

しかし、法律の専門知識がないと、相手の言い分ばかりが通って非常に悪い条件で示談や賠償に応じなければならなくなるケースが少なくありません。
弁護士に依頼すると、もちろん費用はかかりますが、示談金や賠償金を大幅に減額できる可能性があります。

専門家に相談

もし、信用毀損罪違反に問われる行為をしてしまったら、まず弁護士に相談しましょう。
やってしまったことが事実であれば、罪に問われることは免れられません。

しかし、弁護士に頼れば、そこからの交渉を有利にすることができます。
刑罰の軽減、示談金や賠償金の減額ができるのみならず、交渉次第では裁判に進むことなく示談や和解で解決できることもあります。

まとめ

信用毀損罪は、故意に被害者の信用を貶める悪質な犯罪です。
SNSなどの発展により、誰でも広く発言を広められるようになり、軽い気持ちでの発言が大きなリスクとなり得ます。

信用毀損罪の被害者となったり、または自分が加害者になったりした場合には、まずは法律の専門家である弁護士に相談しましょう。

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