IPアドレスで個人情報の特定はどこまでできる?
IPアドレスは、インターネットに接続する際に住所のような役割を果たすもの。
ワンクリック詐欺などで「IPアドレスを抜いた」と脅す手口もありますが、具体的にはIPアドレスからはどのくらい個人特定ができるのでしょうか。
今回は、IPアドレスから特定できる情報の範囲や、ネット上で誹謗中傷などの被害に遭った際、IPアドレスから犯人を特定する方法をお伝えします。
IPアドレスとは
IPアドレスとは、インターネットに接続している機器にそれぞれつけられた、固有の番号のことです。
「192.168.0.1」などのように、0~255までの数字を4つ、ドットで繋いだ形式で表記されます。
このIPアドレスは、インターネット上の住所のようなものです。
インターネット上で送信された情報は、送信時のIPアドレスがわかれば、基本的には、どのプロバイダに接続されたどの機器から送信されたものかがわかるようになっています。
IPアドレスの種類
IPアドレスには、主に「グローバルIPアドレス」と「プライベートIPアドレス」の2種類があります。
グローバルIPアドレスとは、パソコンやルーターなどインターネットに接続する機器にそれぞれ割り振られるものです。
グローバルIPは、重複することがないようICANNという機関などによって世界的に管理されています。
プライベートIPアドレスは、プライベートネットワークに接続する機器に対して割り振られる番号です。
例えば、社内の人しか接続できないプライベート回線の場合、その会社のパソコンのグローバルIPアドレスは同じで、プライベートIPアドレスが異なるという形になります。
プライベートIPアドレスは同じネットワーク内では重複しませんが、他のネットワークのプライベートIPアドレスとは重複する場合があります。
IPアドレスの確認方法
自分のパソコンのIPアドレスは、簡単に確認することができます。
Windows、MacそれぞれのIPアドレスの確認方法は、以下の通りです。
·Windowsの場合
1. スタートボタンからメニューを開く
2. 「すべてのプログラム」を選択
3. 「アクセサリ」→「コマンドプロンプト」を選択
4. 「IPv4アドレス」の横にある数字がIPアドレス
·MacOSの場合
1. リンゴマークからメニューを開く
2. 「システム環境設定」を開く
3. 「ネットワーク」を選択
4. 「IPアドレス」の横にある数字がIPアドレス
ドメインとIPアドレスの関係
ドメインとは、webサイトのアドレスの「Google.com」「Twitter.com」といった部分。そのサイトがどこにあるのかを示す住所のようなものです。
「ネット上の住所」という意味ではIPアドレスと同じ役割を持っていて、さらにドメインはIPアドレスに翻訳することもできます。
個人のPCのIPアドレスは広く他人に知らせる必要はありませんが、サイトのアドレスは多くの人が把握する必要があるので、IPアドレスを覚えやすい文字列に変換しているのです。
例えば、「Google.com」のIPアドレスは「172.217.26.14」となっています。
「IPを抜く」とは
「IPを抜く」とは、通常はIPアドレスが公開されない匿名掲示板などで、書き込み主を特定するためにIPアドレスを入手することです。
ただし、IPアドレスが抜かれたとしても、そこから住所や名前を相手に知られるわけではありません。
ワンクリック詐欺などで、「IPアドレスを抜いた」として脅す手口もありますが、もしIPを抜かれたとしても特に問題ないということを知っておきましょう。
IPアドレスから個人情報はどこまで特定できるか
それでは、IPアドレスから、個人情報がどの範囲まで特定できるのかをお伝えします。
氏名や住所は分からない
先にお伝えしましたが、IPアドレスから即座に住所や氏名を特定することはできません。
IPアドレスから個人特定をすることは可能ではありますが、そのIPアドレスを付与されたプロバイダに発信者情報開示請求を行うという手続きが必要になります。
ネット上の犯罪被害などにあった場合、訴訟や賠償請求を起こすためにプロバイダに開示請求をすることがあります。
しかし、この手続きには時間もコストもかかりますし、情報開示を求める正当な根拠がなければ主張は通りません。
例えば、ネット上で言い合いになった程度であれば、IPアドレスから住所や氏名を手に入れることができない可能性が高いです。
国や都道府県の特定は可能?
IPアドレスから得られる情報としては、ルータのホスト名から位置を推定できる場合があります。
ただし、追跡できるのは接続時の最寄りのルータまでで、そこから詳細な住所などは特定できません。
ルータ名で位置判定ができるのは、国や都道府県、最大でも市区町村単位までです。
サービス提供者側で得られる情報
サービス提供者(プロバイダ)側は、サーバーに接続するユーザーの個人情報を把握することができます。
次の項目で説明しますが、プロバイダはいつ、どの機器からサーバーにアクセスされたのかを記録しています。
また、インターネット利用者はプロバイダと契約する際に住所·氏名などの個人情報を登録しているはずなので、アクセス情報から詳細な個人情報まで辿ることができるのです。
プロバイダが記録している情報
プロバイダは、プロバイダ責任制限法に則り、管理しているサイト上で犯罪等が行われた場合に備えて、「IPアドレス」と「タイムスタンプ」のログを保存しています。
インターネットのプロバイダだけではなく、携帯電話のキャリアも同様です。
ただし、IPアドレスは個人特定にも繋がる重要な個人情報なので、各プロバイダ·キャリアごとにログの保存期間を定め、一定期間後にはその情報は消去されます。
IPアドレスやタイムスタンプのログ保存期間は3~6ヶ月ほどです。
IPアドレスを開示請求で特定するには
IPアドレスや、IPアドレスから特定できる個人情報は、「開示請求」という手続きによって、サイト管理者やプロバイダに開示を求めることができます。
特定するための条件
IPアドレスや発信者の個人情報を開示請求で特定するためには、まず前提として、開示する情報が保存されている必要があります。
前の項目でお伝えした通り、IPアドレスやタイムスタンプのログ保存期間は3~6ヶ月程度。開示請求は問題が発生してから数ヶ月の間に、スピーディーに行うべき手続きです。
また、開示請求が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
·自己の権利を侵害されたとする者による請求である
·権利が侵害されたことが明らかである
·正当な理由がある
開示請求は誰に依頼する?
開示請求の手続きは、制度上は自分で行うことも不可能ではありません。
しかし、サイト管理者やプロバイダが個人からの開示請求に応じるケースはとても少ないです。
開示請求にはスピード感も求められるため、知識とノウハウを持つ専門家や警察に依頼した方がスムーズです。
弁護士
権利侵害をした相手に、投稿を削除してもらいたい、あるいは損害賠償請求を行いたいという場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
仮処分命令や開示請求は、裁判手続きを通じて行うので、法の専門家である弁護士の分野です。
警察
すぐに対応してもらわないと身の危険があるなど緊急性が高い場合、または犯人を逮捕してほしいという場合には、警察に相談しましょう。
警察への相談は、最寄りの警察署か、サイバー犯罪相談窓口で受け付けています。
個人情報特定にかかる時間・費用
任意開示請求:着手金5~10万円、成功報酬10~20万円
仮処分命令申立:着手金20~40万円、成功報酬10~20万円
発信者情報開示請求訴訟:着手金20~30万円、成功報酬10~20万円
また、開示請求にかかる時間は、全工程で半年~1年ほどになることもあります。
サイト管理者に対する仮処分命令は1~1.5ヶ月ほどでできますが、プロバイダへの発信者情報開示請求訴訟は審理が2~3回あるため時間がかかります。
まとめ
IPアドレスとは、ネット上の住所を示すような個人情報です。
IPアドレスから、即座に氏名や住所がわかるわけではありませんが、開示請求という手続きによってIPアドレスから個人を特定することもできます。
ただし、個人からの開示請求に応じるサイト管理者やプロバイダは稀なので、希望する解決方法や緊急度合いによって、弁護士か警察に相談するのがおすすめです。